読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

共著物語

秋山真琴×泉由良 並行世界

塵芥の降る

y text

 遠い天井から、白くきらきらひかる粉のようなものがいっとき降り注いで、やがて止んだ。
「また死んだね」「また殺された」「殺されてない」「逃げた」「兎に角消えた」「死んだの?」「逃げたの?」「殺したの?」「死なせるの?」「死ぬの?」
 塵がさらさらと流れる上層がさわさわと囁く。地層で云えば彼らは、幼年層である。
 青年層がかぶさるように言葉を発する。
「愚かだな」「いいじゃないか、この場所が豊穣になるのだから」「地上の大地は汚辱だな」「その大地が濾過した光が降るんだ、そう嘆くなよ」
 彼らは刹那的なところもあり、何も考えていないようなふしもあった。
 それでも、あの塵芥がこの深みの更に底にある世界に情報と概念を降らせていることを考えれば、降り注ぐそれは、悪いものではなかった。
「誰が幼な児に殺しただの殺されただのという言葉を教えたんです?」
 中年層のなかに眉を顰める空気があった。
「死んだだなんて」
「ぬしも死を知らないわけではないだろう。やがてあの児らも地層を重ねて沈んでゆくんだ、お前のような年齢になる」
 老年層に差し掛かった低い声が云った。老年層と中年層のあいだには、一角獣の化石が埋まっている。ここはきみとは違う世界なのだ。
 最下層部は目を瞑り何も発言することはない。地上の世界が完璧に清廉になれない限り、私たちはこの深い深い下層部の世界で、きらきらひかるひとの果てなる砂を受けながら、じっと堪えているのだ。