共著物語

秋山真琴×泉由良 並行世界

久々に会った

 目を覚ますと父が洗濯物を干していた。洗濯機の中で充分に撹拌され、こぼした醤油が残した斑点や、トマトケチャップの染みが抽出され、買ったときの白さを取り戻したシャツは、くしゃくしゃになって籠の中で丸まっている。父は、人指し指と親指でシャツを注意深くつまみあげると、きちんと折り畳んでから、パンパンと叩く。そうして、皺を伸ばしてから、ハンガーに掛け、物干し竿に吊るしていく。ちょっとくらい皺があったって気にしないから、もう少し雑でもいいのにと思う一方、久しぶりに会った父が生来の几帳面さを失っていないことに、安堵感を覚える。「起きたのかい。カルピスを買ってきたよ」「うん、ありがとう。お父さんは、いつ帰ってきたの」「ついさっきだよ」洗濯機を回転させる時間を考えると、少なくとも一時間は経っているはずだけれども、そう思いながら立ち上がる。畳に寝汗が染みこんで、なんとなく人間の形になっている。気恥ずかしい。空気が循環するようにと、あらぬ方向を向けていた扇風機を移動させて畳を乾かす。カルピスを飲みながら、ベランダの様子を窺うと、もう父はいなかった。せっかく帰ってきたのだから、のんびりすればいいのに。